消費者金融業者の再編等があった場合でも返還を請求できますか?
金融業者の社名やブランド名の変更
金融業者が合併、営業譲渡などの企業再編行為によって、社名やブランド名が変更になることがあります。また、業者間の債権譲渡や契約上の地位の譲渡により、過払い金返還請求をすべき相手方が契約当初と変わっていることがあります。
このような場合、どの業者に過払い金返還請求をすべきかが問題となります。
消費者金融業者間での合併があった場合には、合併後の会社に旧会社の権利義務が引き継がれますので、合併後の会社に対して過払い金の返還を請求することになります。
どの金融業者に請求ができるのかは、「取り扱い可能な金融業者」のページをご覧ください。
業者間で債権譲渡がされた場合
貸金業者間で貸金債権の譲渡が行われることがあります。この貸金債権の借主に実は過払い金返還請求権があったという場合、過払い金返還請求権も新貸主に譲渡されていることになるのかどうかが問題という問題があります。
最高裁判所は、債権譲渡があっただけでは過払い金返還請求権は当然に引き継がれるわけではなく、旧貸主と新貸主の間で過払い金返還義務も引き継ぐ約束をしたことを立証しなければならないと判断しています(最高裁判所平成23年3月22日判決など)。
この判例にしたがうと、このような金融業者間の合意を立証することは部外者である借主には困難ですので、新貸主からの過払い金返還請求は難しいということになります。旧貸主が実質的に廃業状態となっている場合には、過払い金の回収ができないということになってしまう可能性があります。
マルフク→CFJ(旧ディック)の資産譲渡契約
最高裁判所は、旧貸主と新貸主の間の譲渡契約書に新貸主が過払金返還義務を引き継がないという文章があったことなどから、CFJに過払金返還義務が引き継がれないと判断しました。
最高裁判所平成23年7月8日判決
「貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において、譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは、上記合意の内容いかんによるものというべきであり、それが営業譲渡の性質を有するときであっても、借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転する、あるいは、譲受業者が上記金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務を上記譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない」
クオークローンからプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)への切替契約・債権譲渡
最高裁判所は、クオークローンとプロミスの間で業務提携契約を結んだ目的、同契約中に債務引受条項・周知条項があることなどから、過払金返還義務がプロミスへ引き継がれることを認めました。
最高裁判所平成23年9月30日判決
「プロミスは、グループ会社のうち国内の消費者金融子会社の再編を目的として、プロミスの完全子会社であるクオークローンの貸金業を廃止し、これをプロミスに移行、集約するために本件業務提携契約を締結したのであって、上記の貸金業の移行、集約を実現し、円滑に進めるために、本件債務引受条項において、プロミスがクオークローンの顧客に対する過払金等返還債務を併存的に引き受けることが、また、本件周知条項において、クオークローンの顧客である切替顧客に対し、当該切替顧客とクオークローンとの間の債権債務に関する紛争については、単に紛争の申出窓口となるにとどまらず、その処理についてもプロミスが全て引き受けることとし、その旨を周知することが、それぞれ定められたものと解される。プロミスは、上記のような本件業務提携契約を前提として、クオークローンの顧客であった借主に対し、本件切替契約がプロミスのグループ会社の再編に伴うものであることや、本件取引1に係る紛争等の窓口が今後プロミスになることなどが記載された本件申込書を示して、プロミスとの間で本件切替契約を締結することを勧誘しているのであるから、プロミスの意図は別にして、上記勧誘に当たって表示されたプロミスの意思としては、これを合理的に解釈すれば、借主が上記勧誘に応じた場合には、プロミスが、借主とクオークローンとの間で生じた債権を全て承継し、債務を全て引き受けることをその内容とするものとみるのが相当である。
そして、借主は、上記の意思を表示したプロミスの勧誘に応じ、本件申込書に署名してプロミスに差し入れているのであるから、借主もまた、クオークローンとの間で生じた債権債務をプロミスが全てそのまま承継し、又は引き受けることを前提に、上記勧誘に応じ、本件切替契約を締結したものと解するのが合理的である。
本件申込書には、クオークローンに対して負担する債務をプロミスからの借入れにより完済する切替えについて承諾すること、本件取引1に係る約定残債務の額を確認し、これを完済するため、同額をクオークローン名義の口座に振り込むことを依頼することも記載されているが、本件申込書は、上記勧誘に応じて差し入れられたものであり、実際にも、借主がプロミスから借入金を受領して、これをもって自らクオークローンに返済するという手続が執られることはなく、プロミスとその完全子会社であるクオークローンとの間で直接送金手続が行われたにすぎない上に、上記の記載を本件申込書の他の記載部分と対照してみるならば、借主は、本件取引1に基づく約定残債務に係るクオークローンの債権をプロミスに承継させるための形式的な会計処理として、クオークローンに対する約定残債務相当額をプロミスから借り入れ、その借入金をもって上記約定残債務相当額を弁済するという処理を行うことを承諾したにすぎないものと解される。
以上の事情に照らせば、借主とプロミスとは、本件切替契約の締結に当たり、プロミスが、借主との関係において、本件取引1に係る債権を承継するにとどまらず、債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり、この債務には、過払金等返還債務も含まれていると解される。したがって、借主が上記合意をしたことにより、論旨が指摘するような第三者のためにする契約の性質を有する本件債務引受条項について受益の意思表示もされていると解することができる。そして、プロミスが借主と上記のとおり合意した以上、その後、プロミスとクオークローンとの間において本件変更契約が締結されたからといって、上記合意の効力が左右される余地はなく、また、借主が、本件取引1に基づく約定残債務相当額をプロミスから借り入れ、その借入金をもって本件取引1に基づく約定残債務を完済するという会計処理は、クオークローンからプロミスに対する貸金債権の承継を行うための形式的な会計処理にとどまるものというべきであるから、本件取引1と本件取引2とは一連のものとして過払金の額を計算すべきであることは明らかである」