取引先が倒産した場合のための備え(セーフティネット)
取引先などが倒産してしまうと、通常、当該取引先に対する売掛金の回収は難しくなります。そうすると、連鎖してお客様ご自身の会社の資金繰りも苦しくなってしまうことがあります。
このような場合に利用できるセーフティネット制度には、次のようなものがあります。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)―(独)中小企業基盤整備機構
「経営セーフティネット」は、取引先の倒産の影響を受けて中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するための共済制度です。中小企業倒産防止共済法という法律に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構という団体が運営しています。
共済に加入して掛け金を支払うと、加入後6か月を経過して取引先等が倒産し売掛金の回収が困難となった場合に、最高8,000万円の共済金の貸付けが受けられるなどの保障を受けることができます。掛け金は、月額5,000円から20万円まで、5,000円刻みで選択することができます。
1年以上継続して事業をおこなっている一定規模以下の中小企業で所定の加入要件を満たす方が加入することができます。
取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)―(株)日本政策金融公庫
「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」とは、日本政策金融公庫の貸付制度で、取引先などの関連企業の倒産により影響を受けた事業者が、その影響にともない緊急で必要となる運転資金を特別に融資する制度です。
取引企業など関連企業の倒産に伴い緊急に必要な長期運転資金として、返済期間を8年間、限度額1億5000万円として、融資を受けることができます。
セーフティネット保証制度―中小企業庁・信用保証協会
「セーフティネット保証制度」は、中小企業信用保険法2条4項1号に基づく制度です。
経済産業大臣が指定した大型倒産事業者に対して売掛金などの請求権を持っていたがその倒産等によって資金繰りに窮している中小企業に対して、信用保証協会の保証付き融資を受けることができるという制度です。
融資を受けたい事業者は、まず事業所の住所地の市町村商工担当課等の窓口で、認定申請を受け、認定書を受領する必要があります。
その後、認定書を持参し、希望の金融機関や信用保証協会に融資を申し込むことになります。
その他
その他にも各保険会社から取引信用保険が販売されています。
取引先が倒産したときの対応
取引先が倒産した/倒産しそうという情報が入った場合、どのような対応をすべきでしょうか。
まずは、情報を集めて現状を把握する必要があります。
- 取引先は事業を続けているのか
- 取引先は破産申立てなどの法的手続きをおこなったのか/法的手続きをおこなう予定があるのか
- 自社は当該取引先に対してどのような債権をどれだけ持っているのか
- 未回収の債権はどれだけ残っているのか
- 担保権はあるのか、契約書の内容はどうなっているのか
などの事情を整理し、自社が持っている債権についてはリストアップをしましょう。
してはいけないこと
もし、倒産した取引先が破産手続きや民事再生等の手続きの申立てをおこない、裁判所から債権届の用紙が届いたら、忘れずに提出しましょう。債権届を放置してしまうと、配当を受けることができなくなってしまうことがあります。
また、リース物件や納入商品等を取引先に黙って引きあげることは避けるべきです。
これらの物件について担保権があると認められれば、破産等の手続きに関わらずこれを取り戻すことができる場合はあります。
しかし、たとえ法律上担保権を持っている権利者であっても、物件を現状管理している人に無断で持ち去った場合には、窃盗罪等の罪に問われる可能性があります。取引先や破産管財人等の同意を得て引き揚げるようにしましょう。
取引先に買掛金等の債務がある場合
相手がつぶれてしまったなら払わなくてもよいのでは?とお思いになる方もいらっしゃいますが、たとえ取引先が破産等をしても債務はなくなりません。
支払いが行われない場合には、取引先の破産管財人(弁護士)が支払いの請求をしてきます。応じなければ裁判を提起されてしまう可能性もあります。
支払期限を過ぎてしまうと遅延損害金等により支払い金額も大きくなりますので、放置をせずに支払う必要があります。
相殺処理で損害を抑えられることもある
取引先に対して、買掛金と売掛金の両方を持っている場合には、これを相殺することができます。手元の現金等が増えるわけではありませんが、相殺によって売掛金を回収したのと同様の効果を得ることができる場合があります。
もっとも、破産手続き等の法的手続きによって、相殺をする権利(相殺権)が例外的に制限されることがあります。くわしくは、弁護士にご相談ください。