保証人と抵当権の対応
破産や民事再生などをすると担保はどうなるの?
借入れをする際に、貸主(債権者)から保証人を付けたり、不動産に抵当権を設定したりなどの担保の差し入れを求められることがあります。
借主が自己破産や民事再生などの法的手続きを採った場合、その保証人や担保設定者(物上保証人)は、どのような影響を受けるのでしょうか?
自己破産と保証人への影響
お客様が自己破産の申立てをおこなった場合、手続きが終了すればお客様ご自身の借金は免責(無かったことにする手続き)になります。
しかし、免責の効力は、自己破産を申し立てた本人にしか及ばず、保証人・連帯保証人・物上保証人には及びません。貸している債権者とすれば、本人が借金の返済をすることができなくなったときのために保証人を付けているのですから、ある意味では当然のことです。
このような場合、通常は、保証人等は一括で残債務を返済することを求められてしまいます。場合によっては、保証人等についても自己破産の申立てが必要になるかもしれません。
したがって、ご自身が自己破産をする場合には、保証人等になってくれた方に対して事前に連絡をし、自己破産をしなければならなくなった経緯等を説明すべき責任があるといえるでしょう。
ただし、保証人等に迷惑をかけてしまうからといって、この方にその分のお金を渡したりすることはしてはいけません。
借金の返済が困難になった後にそのような行為をしてしまうと、破産管財人から否認権を行使されたり、免責手続きにおいて免責不許可事由として問題視されたりしてしまう可能性があります。
否認権が行使された場合には、お金を受け取った方が破産管財人から返還請求を受け、場合によっては訴訟を提起されることになります。かえって迷惑をかけてしまう結果となるおそれもありますので、注意が必要です。
また、一部の人にだけ支払いをするなどといった行為は、破産法上、免責不許可事由に当たり、借金の免責を認めるか認めないかを決める手続きにおいて問題となり、場合によっては借金の免責が認められなくなってしまうおそれがあります。
そうなっては自己破産をした意味がなくなってしまいますので、注意が必要です。
民事再生と保証人等への影響
民事再生の場合も自己破産と同様に、その効力は保証人等には及びません。
つまり、民事再生案が認可され、借金のカットや分割払いの猶予などの効果を受けるのは、民事再生を申し立てた方本人のみです。その保証人等の保証債務は減額されることはありません。
破産者に対して担保権を持っている場合
自己破産の場合
抵当権などの担保権を持っている債権者は、担保権を持っていない債権者に優先して債権回収をすることが認められています。
たとえば、ある債務者がお金を借りる際に不動産に抵当権を設定していた場合は、その抵当権の権利者(抵当権者)は、その不動産の売却代金から優先して債権回収を図ることができます。たとえ、他の担保権を持っていない債権者が売却手続きに関わってきたとしても、まずは抵当権者がその順位にしたがって売却代金からの配当を受けることになります。
破産法では、このような担保権者の優先的な地位を尊重し、別除権という権利を担保権者に認めています。
別除権とは、破産手続きの開始時に破産者が持っていた財産に設定されている一定の担保権に基づき、その対象となっている財産について、破産手続きによらずに優先的に債権回収をできる権利のことをいいます。
つまり、別除権を持っている別除権者(=担保権者)は、破産手続きが開始されているかどうかに関係なく自由に担保権を行使でき、破産手続きにかかわらず、担保権を実行して得られた売却代金等から優先的に支払いを受けることができます。
民事再生の場合
民事再生でも、別除権者(担保権者)は、再生手続きにかかわらず担保権を実行して債権回収を図ることができるとされています。
ただし、事業の継続や事業の再生に必要不可欠な財産に設定されている担保権が実行されてしまうと、民事再生が困難となってしまうことがあります。そこで、民事再生法では一定の条件がそろえば、担保権の実行としての競売手続の中止命令や担保権の消滅許可の申立てを認めています。
実際には、事業の継続・事業の再生に必要不可欠な財産については、再生債務書と担保権者の間で取り決めをし、借金の返済額や条件とその間の担保権実行のストップや担保権の解除などを合意することが多く、担保権の消滅許可の申立ては、どうしても債権者の合意が得られない時の最終手段となることが多いです。
つまり、再生債務者と担保権者の間で交渉をし、担保権を実行しない(もしくは担保権を放棄する)かわりに再生債務者が一定の支払いをすることを約束するのです。
このような約束を「別除権協定」といいます。
会社更生の場合
これに対し、会社更生では、担保権者に別除権は認められていません。担保権者も更生手続きの中で権利を行使しなければなりません。