破産財団とは?
「破産財団」とは、破産手続きにおいて債権者の配当にあてられる破産者の財産のことをまとめて呼んだ呼び方です。
破産財団に属する財産は、破産手続き開始後、裁判所が選任した破産管財人の管理下におかれ、処分されます(破産法2条14項)。破産者は、破産財団に属する財産の管理処分権を失い、最終的にはこれを手放すことになります。
逆に、破産手続きがされても破産者が自由に使うことのできる財産のことを「自由財産」と呼びます。
どのような財産が破産財団に含まれるの?
原則として、破産手続開始決定時に破産者が有する一切の財産が破産財団となります(破産法34条1項)。
不動産や預貯金、現金などのほか、処分してお金に換えることができる財産的価値のあるものは、すべて含まれます。
事業者の場合は、事業設備や在庫商品、原材料などだけではなく、のれんやノウハウなども含まれることがあります。また、破産手続開始後の将来の請求権であっても、それが破産手続開始前に生じた原因によって生じた場合には、その将来の請求権も破産財団に含まれます(破産法34条2項)。
以上が原則ですが、例外として、破産者が破産手続きの開始の時に有していた財産のうち、①99万円までの現金と②法律上差押えが禁止されている財産は、破産財団に含まれず、破産者の自由財産となるとされています(破産法34条3項)。
また、破産手続開始決定後に取得した財産も、破産財団には含まれず、破産者の自由財産となります。
担保権付きの財産も破産財団に含まれるの?
破産者の持っていた財産に抵当権、質権や譲渡担保件などの担保権が設定されていることがあります。このような財産も破産財団には含まれます。
ただし、このような担保権を持つ債権者は、本来、担保権の対象となる財産から優先して債権回収をできる立場にあります。そこで、破産法でもその優先的な立場を行使できることにされています。
具体的には、一定の担保権を有する債権者は、破産手続き上、「別除権」という権利が認められており、破産手続きによらないでこれらの担保権を行使することが認められています(破産法2条9項、65条1項)。
別除権(担保権)の設定されている財産は、破産財団には含まれますが、破産管財人の処分・配当手続きとは別に別除権者(担保権者)が権利を行使して、そこから債権回収を図ることができます。
破産財団にみえるが本当は含まれないもの―取戻権
破産者が破産開始決定の時に持っていた財産であっても、実質的には破産者とは別の第三者の権利に属する財産が含まれている場合には、真の権利者は、これを破産財団から取り戻すことができます。真の権利者が本当は破産財団に属しない財産を破産財団から取り戻す権利のことを「取戻権」といいます。
たとえば、第三者の所有物が破産財団のなかに紛れこんでしまっている場合には、真の権利者である第三者は、自分の所有権に基づき、その財産に対する取戻権を行使することが出来ます。
破産財団の放棄とは?
破産管財人は、債権者への配当をなるべく多くするように努めなければなりませんが、他方で、なるべく早期に配当を実施し、破産手続きを早期に終わらせることも求められています。
そこで、財産的価値がまったく無いわけではないが、処分するのにかなり長い時間を要する財産があり、時間をかけてこれを処分するだけのメリットが乏しい場合などは、破産管財人の管理・処分権限の範囲から外すことがあります。このことを、破産財団の放棄といいます。
破産者が個人(自然人)の場合には、放棄された財産の管理・処分権限は、破産者に戻ることになります。
たとえば、山奥にあって誰も買い手がつかないような土地などが破産財団から放棄されることがあります(その土地の地域・広さによっては、たとえ人が住むには適さない場所でも、ソーラーパネルの設置場所等などとして需要が見込めることもあり、放棄されないこともあります)。
破産財団に属する財産を取り戻す―否認権
本来であれば破産財団に含まれるべき財産が、破産手続開始決定前に破産者の手元から失われてしまうことがあります。
たとえば、破産者が、破産申立て直前に、自分の持っている土地などを親戚に安い値段で売却した場合などです。
このように、本来であれば破産財団の一部として債権者の配当にあてられるべき財産が散逸してしまったときは、破産管財人が否認権という権限を行使し、その財産を破産財団に取り戻すことができる場合があります(破産者から財産を受け取った人からみると、財産移転行為の効力が否定され、財産を奪われてしまうことになります)。
破産財団に本来含まれる財産が第三者の手に渡ってしまったときに、これを取り戻して破産財団をあるべき姿に戻すことも、破産管財人の任務のひとつです。
否認権について詳しい解説はこちらからどうぞ。