具体例
法人破産の破産手続きの流れ
このページでは、法人破産の場合の破産手続きの流れについて、架空の会社が破産申立てをする場合を例にご説明いたします。
A社の法人破産の例
相談・方針の決定
まずは、当事務所の無料法律相談のご予約をお申込みいただき、当事務所までご来所いただくことになります。
今回のケースでは、A社の代表取締役B社長にお越しいただき、ご事情をおうかがいすることになりました。 ご相談の際は、当事務所のスタッフが、会社および社長の財産状況や負債状況などをおうかがいいたします。
その結果、今回のケースでは下記のような状況であることが分かりました。
A社の財産状況
- A社は、30年ほど前に創業された子どものおもちゃ等を扱う小売業者でした。家族経営で従業員はいません。
- A社は、10年前頃から少子化等のため売り上げが減少し、業績が低下するようになりました。
- その後、運転資金を調達するために借入れを繰り返し、負債が膨れ上がるようになりました。
- A社の財産は、預貯金、帳簿上の売掛金、在庫商品その他財産を含めて帳簿上の合計額は約5000万円と計上されています。ただ、売掛金の多くは回収できないかもしれません。
- A社の負債は、買掛金約300万円、借入金7000万円などが計上されています。
B社長個人の財産状況
- B社長名義の預貯金が数万円あり、生命保険に1つ加入しています。自宅がありますが、会社が銀行から借入れをする際に根抵当権を設定しています。
- また、B社長が会社の借入れの際に連帯保証人となっています。
A社は債務超過の状態ですし、B社長自身も事業をたたみたいとのことでしたので、A社の破産手続きを申し立てることになりました。
また、B社長個人についてもA社の連帯保証人となっていたり自宅に抵当権を設定していたりしていることから、あわせて破産手続きの申立てをおこなうことになりました。
そこで、A社とB社長について自己破産申立ての委任契約書を取りかわしました。
後述の受任通知の発送後は、クレジットカードの利用ができなくなります。そこで、カード決済となっているものを現金決済に変更します。
また、借入れをしている銀行の口座に預金が残っていると、口座が凍結されて相殺されてしまいますので、前もって預金の引き出しをします。売掛金の入金口座がその銀行の口座となっていた場合は、取引先に連絡をして口座を変更してもらいます。
受任通知の発送
特に受任通知を発送するのを遅らせるべき事情がない限り、契約後ただちに当事務所から受任通知を発送します。
受任通知が届いた後は、お客様への直接の取り立ては通常止まります。もし、債権者が取り付け騒ぎを起こす可能性がある場合には、対応措置を講ずることがあります。
また、未払いとなっている売掛金については請求書を送り、支払いを請求します。ときどき、相手が破産をするのであれば払う必要がないのではないかと誤解される方がいますが、そのようなことはありません(後に破産管財人から請求を受けることになります)。
申立ての準備
必要書類の準備
会社やB社長個人の資産・負債を調査し、破産申立てに必要な書類を準備します。
在庫商品については、生鮮品などすぐに処分が必要なものだったり、保管費用が多額だったりする場合でなければ、破産管財人に引き継ぎます。
また、B社長が加入している生命保険の解約返戻金の金額を確認します。生命保険を解約しないで継続する場合には、解約返戻金に相当する金額を用意して破産財団に組み入れてもらう必要があります。
自宅不動産は、破産申立て前に任意売却をすることもできますし、破産管財人に引き継ぐこともできます。いずれにせよ、自宅は売却されてその代金が債権者へ充てられることになります。引っ越し費用が破産申立て費用を準備する必要がある場合は、破産申立て前に任意売却することもあります。
不要な契約の終了
閉店や事務所の閉鎖などにより不要となる契約(リース契約や電話の契約、不動産賃貸借契約など)は、必要書類・帳簿の保管をしたうえで、早めに解約または停止しておきます。
申立て
申立ての準備ができたら、申立書類一式を裁判所へ提出します(この段階でお客様に裁判所へ同行いただく必要は通常ありません)。
申立書類を提出した後、裁判所で受付の手続きが行われます。
申立書類の受付が終わり、破産手続開始決定がされると、裁判所から破産管財人が選任されます。破産管財人が決まった後は、必要な引き継ぎをおこなうことになります。
債権者集会
破産手続きの開始決定から2~3か月後頃に、第1回目の債権者集会が開かれるのが通常です。
債権者集会には破産者も出席する必要がありますので、当事務所の弁護士と一緒にB社長にもご同行いただきます。
債権者集会は、裁判所の一室で開かれます。取引先などの債権者が出席することもありますが、多くのケースでは債権者が出席することはありません。
債権者集会では、破産管財人がこれまでの業務内容などについて報告をおこないます。
配当する財産がなかった場合
配当をする財産が形成できなかった場合は、破産管財人がそのことを報告し、裁判所が破産手続きを終了する決定(異時廃止決定)をすることにより、破産手続きが終了します。
B社長個人の破産手続きについては、引き続いて免責許可が問題となりますので、免責についても破産管財人が意見を述べます。
配当する財産がある場合
破産管財人の業務の進行状況によって、第2回・第3回の債権者集会が開かれることもあります。
配当が終わると破産手続きは終了となります。
免責許可決定―事件の終了―
免責不許可事由があるなどの問題がなければ、最後の債権者集会から約1週間で裁判所からB社長について免責許可決定の通知があります。
この免責許可決定が確定すると、B社長は借金等の支払いを免れることになります。