民事再生とは
民事再生とは、経済的に破たんの危機にある債務者が、裁判所から選任される監督委員等の監督のもと、事業や生活の立て直しをはかっていく手続きのことをいいます。
破産手続きと違うのは、債務者が財産の管理者としての地位や(事業を営んでいる場合は)経営者としての地位を失わない点です(破産手続きの場合、債務者が持っている財産は破産管財人が代わりに処分して配当に回すことになります。また、法人が破産する場合にはその法人が消滅します)。
また、借入れ金などの債務については、一部カットを受けたうえで残額を分割払いをすることが一般的です。つまり、破産手続きと違い、借金の支払いが全て免除される(借金が無かったことになる)わけではなく、いくらかの支払いをしなければならない点も、破産手続きとの違いです。
他方、民事再生が任意整理と違うのは、裁判所が関与する手続きである点です。そのため、民事再生では、すべての債権者が同意しなくても借金の整理をすることができる場合があります。
個人再生とは
民事再生は、もともとは会社(法人)の経営の再建を中心に想定されてつくられた手続きでした。
この民事再生の手続きを個人の債務者が利用しやすいように整え、民事再生の一類型として2001年に新しく設けられた制度が、個人再生です。
個人再生手続きでは、裁判所の関与のもと、借り入れの大幅なカットを行い、残額を基本的に3年間(最長5年間)分割払いで支払うというスケジュールによって、支払いをしていくことになります。この点は(法人や事業者の)民事再生の場合と基本的には同じですが、個人再生の方が、手続きが簡単になっています。
自己破産の手続きと違い、すべての借金の支払いが免除されるわけではありませんが、自己破産の手続きにある資格制限がなく、「住宅資金特別条項」という制度を使ってマイホームを手放さずに借金の整理をすることができる場合があります(自己破産の場合は、土地や建物などの高額な財産がある場合には基本的にこれを手放さなければなりません)。また、借金の原因がギャンブルや浪費であって、自己破産の手続きを利用できない場合であっても利用することができます(個人再生には免責不許可事由のようなものはありません)。
しかし、その代わり、個人再生の手続きを利用するには、下記の条件を満たしている必要があります。
- 住宅ローンなどを除く借入れ総額が5000万円以下であること
- 将来にわたり安定した収入を得ることが見込まれ、その収入で継続的に支払いができること
民事再生のメリット
個人の場合
民事再生手続きの場合、一定の条件を満たせば、マイホームを手放さずに借金の整理をすることができます。
民事再生手続きの場合、自己破産の場合には免責不許可事由となる事情があった場合や、自己破産をしても免責されない債権(非免責債権)についても、再生計画が債権者や裁判所に認められれば、支払いの猶予や免除が受けられる場合があります。
法人の場合
民事再生の場合は、事業を続けながら、借金の一部免除や残額の支払いの猶予(分割払いの約束)を受けることができます。
また、法人の経営者は、退陣せずに引き続き経営を行うことができるのが原則です。
場合によっては、保全処分を利用し、銀行取引停止処分(手形不渡り)などの責任を回避できることもあります。
民事再生のデメリット・限界
民事再生手続きでは、担保権の実行を止めることが原則としてできません。したがって、事務所や工場などを担保として事業資金の借り入れをしている場合には、その債権者との間で話し合いができなければ、事業の再建ができない場合があります。
また、民事再生の申立てを行うと、取引先との間で信用不安を引き起こし、仕入れに障害が生じたり売上が減少したりするなどの混乱が生じてしまう場合もあります。
そこで、民事再生の申立てを行う場合には、このような信用不安のリスクを考慮しても民事再生手続きの申立てによって事業を立て直すことができる見込みがあるのかどうかを、よく検討しなければならないといえます。
自己破産の場合は基本的にすべての借金等の支払いが免除されますが、民事再生の場合には全額が免除されることはありません。
また、自己破産の場合、自己破産の申立てをしてから手続きが終わるまでの期間は、早ければ約3か月程度ですが、民事再生の場合には、民事再生の申立てから分割払いの支払いが終わるまでに3年半~4年程度の時間がかかることがあります。
裁判所へ納める費用も、自己破産よりも民事再生の方が通常高額になります。
自己破産の場合には、同時廃止事件で2~3万円程度、管財事件で20~50万円程度の予納金が必要となりますが、民事再生の場合は、申立書に記載した将来の毎月の支払い予定額を約6か月間、決められた期限までに納める必要があります(履行テスト)。
また、自己破産の場合には、債権者の同意がなくても免責不許可事由がない限り借金の免除(免責)が認められますが、民事再生の場合は、原則として、一定以上の債権者の同意が必要となります(給与所得者再生という手続きを選んだ場合は別です)。