ケース別債権回収(特別養護介護施設などの老人ホーム)
老人ホーム特有の問題
有料老人ホームなどの民間運営施設、特別養護老人ホームなどの公的機関運営施設(ここではまとめて老人ホームとして説明をします)においても、入居者さんに関する未収金があるケースが多いようです。
老人ホーム特有の問題としては、まず人道的配慮が必要な点です。
要介護認定を受けている入居者さんに対して、施設利用料が未払いだから、退去をしてください、というのもなかなか難しいものがあります。
ただ、未収金が多くなってしまった場合には、やむを得ず、退去をお願いするほかありません(その際には、別の施設を紹介したりですとか、在宅介護への適切な切り替えを行う必要があるでしょう)。
そのほかの問題点としては、入居者さんの意思能力に問題があることが多いことです。
入居者さんの意思能力に問題がある場合(認知症が進行しているケースなど)は、当然のことながら、入居者さんご本人と施設利用料の支払の話し合いができません。
加えて、施設利用料が未納のまま、入居者さんがお亡くなりになってしまうという問題もあります。
債権回収の方法
入居者さんが存命+認知能力に問題が無い場合
この場合は、一般的な債権回収の方法により、入居者さんご本人に施設利用料の支払いを求めることになります。 例えば、面談を実施したり、請求書を簡易書留で送ったり、内容証明郵便で送ることになります。 それでも、施設利用料を支払ってもらえない場合には、施設利用契約を解除し、退去をしてもらった上で、未払いの利用料を裁判で回収することになります。
入居者さんが存命+認知能力に問題がある場合
この場合が、最も難しいケースです。
まずは、老人ホームに往診に来ていただいている医師に認知能力の診察をしてもらうことが良いでしょう(長谷川式認知症スケールなどを用いて財産管理が可能かどうかを診察してもらいます。)。
認知能力に問題があるとされた場合には、施設利用契約書の記載に従って手続きを履践していくことになります。
例えば、入居時の保証人に対して施設利用料の支払いを求めるケースが多いと思います。
入居時にしっかりとした保証人を立ててもらえない場合には、この段階での債権回収は極めて難しくなります。
入居者さんがお亡くなりになられた場合
この場合、入居者さんに請求することはできませんから、入居者さんの相続人に対して、施設利用料の請求をすることになります。
法定相続人とは、お亡くなりになられた方(被相続人といいます)の配偶者、子、兄弟姉妹などです(直系尊属も相続人となりますが、老人ホームの場合、入居者さんの父母は既にお亡くなりのことと思われます)。
これらの方に請求をすることになります。
ただし、法定相続分は人によって異なりますので注意が必要です(配偶者は2分の1、お子様も2分の1ですが、お子様の人数により頭割りします。)。相続人がわからない場合には、債権者であることがわかる資料を示して、確約書で戸籍謄本の取り寄せを行うことが必要になります。