リース会社の債権回収
1.ご相談例
(相談内容)
当社は、2年前にA社とのリース契約を締結し、オフィス向け複合機5台を設置しました。その後、毎月のリース料金は問題なく支払われていたのですが、2か月前からA社からの支払が止まってしまいました。
今のところ郵便で入金の催促をしているだけですが、今後どのような手段をとればリース料金を回収できるでしょうか。
(回答)
ユーザーにリース料を支払ってもらえなくなった、もしくは支払が遅れだした、というのもよくある事態です。
契約の内容によっては、リース料の支払が遅れた場合には、リース事業者側から一方的に契約を解除できるということもあります。
しかし、催告すればリース料を支払ってもらえる可能性もゼロではないため、直ちに契約を解除することが最善とは言えません。
まずは穏便に、遅れているリース料を支払ってもらうよう、ユーザーに連絡・催告するとともに、支払が遅れた理由についても聴取してみてください。
そして、どうしても支払ってもらえない場合は、次の手段として、契約の解除、損害賠償請求を検討しましょう。
リース契約では、「ユーザーが期限までに利用料を支払わなかった場合は、1リース事業者はリース契約を解除して、目的物を回収できる、2ユーザーは当然に期限の利益を喪失し、リース事業者は催告なしにリース料全額の支払を請求できる、3リース事業者は規定の額の損害賠償を請求できる。」といった内容が定められているのが通常です。
以下、1契約解除と目的物の回収、2リース料全額の請求、3損害賠償請求それぞれについて、説明いたします。
1.契約解除と目的物の回収
上記のような特約がある場合、ユーザーの債務不履行があれば、催告なしに契約解除できることは、冒頭で軽く触れたとおりです。
また、特約で解除について定めていない場合でも、民法の規定によって契約を解除できる場合があります。民法の規定では、解除の前に催告が必要です。
催告の後、相当の期間(この期間は一般に1、2週間と解されます。)のうちにリース料の支払いがなければ、ユーザーの債務不履行を理由に契約を解除することができます。
契約を解除するときは、相手に対して「契約を解除する。」という意思表示をしなければなりません。しかし、催告の際に「もし相当期間内に支払がない場合は契約を解除する。」という一文を付けておけば、相当の期間の経過後に改めて解除の意思表示をしなくても、契約は解除されたことになります。
契約の解除によって、ユーザーは目的物を利用する権利を失います。その結果、リース事業者は、契約解除後、所有権に基づいて、ユーザーに対し目的物の返還を請求できるようになります。
目的物の返還を請求しても、ユーザーが返還に応じない場合は、訴訟及び強制執行が必要となるかもしれないため、早めに弁護士に相談すべきです。
なお、所有権があるからと言って、ユーザーの承諾なく目的物を引き上げることは違法ですので、絶対に行わないでください。
2.リース料全額の請求
リース目的物を契約期間の途中で返還された場合、請求できるリース料の金額に影響はあるのでしょうか。
これについて最高裁判所昭和57年10月19日判決は、ユーザーの債務不履行が原因で契約期間の途中で目的物が返還された場合でも、リース事業者は全契約期間分のリース料を請求できるとしました。
そのうえで、返還時のリース目的物の価値(例:50万円)から予定していた契約終了時に目的物が有しているはずの価値(例:10万円)を引いた分(例:40万円)は、リース会社がリース料残額とリース物件の価値を二重に取得するのを阻止するため、ユーザーに返還すべきであると判断しています。
つまり、目的物の返還を受けた場合は、その価値の分だけ請求できるリース料が減ることになります。
3.損害賠償請求
ユーザーがリース料を支払わなかったためにリース事業者が損害を被った場合、因果関係の認められる範囲で、リース事業者はユーザーに損害賠償を請求できます。
これは、リース契約を解除した場合でも、そうでない場合でも可能です。
ただし、債務不履行があった場合の損害賠償額を事前に契約の中で定めていない場合、具体的な損害額の算定が困難な場合もあります。
【注意】
弊所では、債権回収業務について、事業性資金(事業により発生した債権(例:工事代金、売買代金、診療報酬などの売掛金や賃料・リース料など))の回収業務のみをお受けしております。個人間・親族間の貸付け等(親子間の貸付けや、個人的な貸付け)の債権回収は受け付けておりません。予めご了承ください。