解雇トラブルを防ぐために
これまで説明したように、解雇をめぐるトラブルが生じた場合、会社にとって大きな負担や損失が生じます。
ここでは、解雇トラブルを防ぐための対策について解説します。
1.円満退社(解雇)の方法
解雇が有効と認められるためには以下の要件を満たす必要があります。
(1)法律上の解雇禁止事項に該当しないこと
(2)法律に則って解雇予告を行うこと
(3)就業規則の解雇事由に該当していること
(4)解雇に正当な理由があること
(5)解雇の手順を守ること
(1) 法律上の解雇禁止事項に該当しないこと
法律上の解雇禁止事由に該当する場合、解雇は無効となります。具体的な例は「有効な解雇とは」のページをご覧ください。
(2) 法律に則って解雇予告を行うこと
労働基準法第20条で、解雇するときには解雇の予告を行うことが義務付けられています。少なくとも30日以上前に解雇の予告(通告)をするか、解雇予告手当を支払う必要があります。
解雇予告手当の詳細については「解雇とは」のページをご参照ください。
(3) 就業規則の解雇事由に該当していること
就業規則に必ず記載しないといけない事項の1つに「解雇の事由」が定められています。
就業規則解雇事由を具体的に明示することで、これに該当するかどうか判定しやすいので、トラブルも少なくなります。解雇事由に該当するものがないのに解雇したときは、その解雇は「無効」と判断されます。
また、同じような問題行為のあった従業員に対し、1人だけを解雇処分とした場合、公平性を欠くとして無効になる可能性があります。
日頃から、何か問題が生じたときには、就業規則に基づいて客観的かつ公正な対処を行うという運用をすることが重要です。
なお、従業員が10人以上のいる場合は労働基準法により、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
もっとも、トラブルを防ぐためには、法律上の義務のない10人未満の会社でも就業規則を作成し、労働条件や解雇事由を明記しておくことをお勧めします。
(4) 解雇に正当な理由があること
労働契約法16条の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」という要件を満たしている必要があります。
懲戒解雇の場合、最も重い懲戒処分であり労働者への不利益が非常に大きいことから、重大な違反行為があることが必要となります。
普通解雇の場合でも、軽度の就業規則違反で解雇をすることはできず、解雇がやむを得ないような相応の理由が必要となります。
具体的な解雇理由については、「解雇理由」の各ページで解説しています。
(5) 解雇の手順を守ること
労働者が就業規則に「解雇事由」として定められた行為を行った場合には解雇しても問題ありません。
ただし、十分な客観的証拠に基づき処分を検討した上で、本人の弁解を聞く機会も与える必要があります。
また、勤務態度等に問題があった場合でも、いきなり解雇するのではなく、必要な手順を踏む必要があります。
具体的には、まずは当該従業員に対して、何度も注意や指導を行うことになります。この時に本人の言い分を聞き、同時に、会社としての考えを伝えます。
態度が改まらないようであれば、始末書等を提出させて様子を見る、ということを2、3回行います。こうした記録が書面で残っていれば、裁判になったときに会社は十分な指導を行っていた証拠として利用できます。
それでも改善が見られない場合は、減給や出勤停止などのより重い懲戒処分を行います。このときに注意を促すだけでなく、改善されなければ解雇もありえる旨を懲戒処分通知書に記載します。
なお、就業規則にない懲戒処分はできないので、予め懲戒処分に該当する行為を定めておく必要があります。
ここまでの注意や処分を会社が繰り返し行っても、結局状況が改善されないような場合に至った時に、解雇が可能になります。
逆に、このような手順を経ずにいきなり解雇されれば、当該従業員は「何の理由もなく、突然解雇された」と考えて、会社に不満を抱くことが多いと思われます。
手間はかかりますが、後の紛争リスクを避けるためには、このような段階的な手順により解雇を行うこと必要になるでしょう。
2.まとめ
このように、従業員を解雇するためには、法律上の要件を満たすこと、適切な手続を踏んで行うことが求められています。また、書面での通知等により、客観的な証拠を残しておく必要もあります。
従業員の解雇をめぐる問題でお困りの会社様は、是非弊所にご相談ください。
【注意】
弊所では、残業代請求を含む労働トラブルについて、会社経営者様からのご相談(会社側のご相談)のみをお受けしております。 利益相反の観点から、従業員・労働者側からのご相談はお受けしておりませんので、予めご了承ください。