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介護事故4(誤嚥事故)

1.誤嚥事故と事業者の責任の有無

特別養護老人ホームで食事介助中、要介護者がのどにコンニャクをつまらせ窒息死しました。この場合、介護事業者の損害賠償責任は認められるのでしょうか。

結論から申し上げますと、転倒事故の場合とは異なり、認められない場合もあります(転倒事故については「介護事故3(転倒事故)」のページをご参照ください。)。

誤嚥事故に関する裁判例の多くは、安全配慮義務違反ではなく、不法行為責任による損害賠償請求を認めています。そして、不法行為責任が認められるための重要な要素が、介護従事者の過失の存在です。過失はなかったと判断された場合には、損害賠償請求は認められません。

過失は、一般的な介護従事者であれば誤嚥が発生することを予見することができること(予見可能性)を前提とした予見義務違反、及び誤嚥という結果を回避することができたといえること(結果回避可能性)を前提とした結果回避義務違反をいいます。責任を問われている介護事業者その人の個人的な能力に応じた過失ではありません。

そして、多くの裁判例では、

  1. 誤嚥事故発生に至るまでの経緯
  2. 事故発生後の対応、
に分けて過失の有無を検討しています。

以下、上記(1)及び(2)についてご説明いたします。

2.誤嚥事故発生に至るまでの経緯における過失(1)誤嚥の予見義務違反

誤嚥の予見義務違反については、誤嚥事故に近接した時期の要介護者の嚥下能力、医師による嚥下障害の可能性の指摘の有無、むせたり、咳き込んだりするなどの異常その他の症状に着目して判断されています。

上記判断要素からして、誤嚥の兆候があり、それを認識することができたにもかかわらず、認識しなかった場合には、誤嚥の予見義務違反があり、過失があるといえます。

神戸地方裁判所平成16年4月15日判決は、要介護者にむせるといった症状はあったものの、その症状には波があり、かつその誤嚥をうかがわせる症状はなく、要介護者が食事を全量摂取することが多かった事実から、誤嚥の兆候はなく、認識することができなかった以上、予見義務違反はないと判断しました。

また、東京地方裁判所平成22年7月28日判決は、通常は自力で食事をしていた高齢者が誤嚥に陥った事案について予見義務違反はないと判断しています。

一方、京都地方裁判所平成25年4月25日判決は、難病による嚥下障害がある入所者の場合、食事中に食べ物を口にしない状況があったとすれば、それは誤嚥による呼吸困難を疑う必要があったといわなければならないから、職員は、利用者の鼻や口からの吐息を注意深く観察するとか、利用者に問いかけるなどして、呼吸の有無と程度を確かめるべきであったし、これを確かめておけば、利用者の呼吸状態が極めて悪いことに気付くことができたものと述べて、予見義務違反を認めました。

3.誤嚥事故発生に至るまでの経緯における過失(2)食事介助行為の過失

誤嚥事故の原因となる食物には様々なものがありますが、特にこんにゃくやはんぺん、かまぼこはそれ自体嚥下障害の患者に向かない食物であると指摘されています。

名古屋地方裁判所平成16年7月30日判決では、このような食物を食べさせるに際しては、要介護者に誤嚥をしょうじさせないように細心の注意を払う必要があったと述べています。そして、こんにゃく等を食べさせる際の確認が不十分であったと判断して過失を認めました。

このように、こんにゃく等を食物として選択したとしてもそのことから直ちに過失が認定されるわけではありません。こんにゃく等の食物を食べさせたとしても、その際、口の中を十分に確認し、嚥下動作を確認するなどしていた場合には過失はなかったと判断されます。

ただし、上記判決では、介護職員が要介護者を斜め上から見下ろすような体勢で食事介助をしていたことについて、当該角度では嚥下を十分に確認できなかったはずであると判断して確認が不十分であったとしています。また、「次は何を食べます?」との声かけに応じて口を開けたことから嚥下を完了したと判断したことについても、当該要介護者は会話がやや困難なで理解力及び記憶力がやや低い等程度の認知症であったことから、確認行為を行ったとはいえないと判断しています。

4.誤嚥事故発生後の対応の過失

誤嚥事故発生後の対応の過失については、誤嚥事故が死亡事故につながることが多く、極めて重大な結果に直結することから、(1)迅速かつ適切な応急処置がとられたか否か、(2)事故後一刻も早く医師若しくは救急車を呼び救急隊員の手に委ねたか否かが問われています。

(1)の点の過失を検討した裁判例

横浜地方裁判所川崎支部平成12年2月23日判決では、救急車を呼ぶまでの間に、バイタルチェック、看護師による心臓マッサージ、家族への電話しかしなかった点をとらえて適切な応急処置がとられたとはいえないとして過失を認めています。

これに対し、神戸地方裁判所平成16年4月15日判決では、要介護者の誤嚥類型を明らかにしたうえで、当該類型の誤嚥に対する救命措置として、背中をたたき、吸引機で吸引したこと、掃除機にノズルを付けた吸引機で吸引したこと、看護師がアンビューバックで人工呼吸をし、心臓マッサージを行なったことに落ち度があったとはいえないと判断しました。

(2)の点の過失を検討した裁判例

東京地方裁判所平成19年5月28日判決では、当該施設には専門的な医療設備がなく、介護職員らが医師免許や看護師資格を有せず、医療に関する専門的な技術や知識を有していなかったことから、誤嚥をしたと疑われる場合に、介護職員らが応急処置をしたとしても、気道内の異物が完全に除去されたか否かを的確に判断することは困難であったのであるから、介護職員らは、引き続き経過を観察し、再度様態が急変した場合には、直ちに専門家である嘱託医に連絡をして適切な処置を施すよう求めたり、救急車の出動を直ちに要請する義務を負っていたと認定しました。

そして、同判決では、介護職員らが注意深く経過を観察せず、急変後救急車の出動を要請しなかったことから、介護職員らに過失があったと認定しました。これは、(2)に加えて、経過観察義務を認めた点に大きな特徴があるといえます。

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