介護保険制度とは(総論)
1.介護保険はどのような制度なのか
介護保険の必要性
私たちの社会は、現在、急速に高齢化が進んでいます。
高齢化に伴い、介護を必要とする方の増加が見込まれていますが、その反面、少子化・核家族化などにより、家族だけで介護を支えることは困難な状況にあります。
こうした状況を背景に、介護を社会全体で支えることを目的として平成9年に介護保険法が制定され、平成12年4月から介護保険制度が施行されました。
介護保険の仕組み
介護保険制度は、加入者が保険料を出し合い、介護が必要なときに認定を受けて、必要な介護サービスを利用する制度です。
実施主体
介護保険の実施主体は、市町村及び特別区(東京23区)(以下「市町村」と略します。)です。市町村は保険者として、保険料と公費を財源として、介護保険事業を運営しています。
加入者(被保険者)
介護保険の加入者(被保険者)は、年齢により第1号被保険者(65歳以上の方)と第2号被保険者(40歳~64歳の方で医療保険(国民健康保険等)に加入されている方)に区分されています。
保険料
第1号被保険者は、年金からの天引きや直接保険者に納付する方法で定額の保険料を納付します。第2号被保険者は、国民健康保険料や職場の健康保険料などと一緒に納付します。第1号被保険者も第2号被保険者も保険料は所得に応じて決まります。
2.介護保険で受けられるサービス
介護保険で受けられるサービスは、大きく分けて介護サービスと介護予防サービスに分かれます。
それぞれ、さらに細かくサービスが別れていますので、どのようなサービスが受けられるかをまとめました。
介護サービス
施設サービス
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設(平成30年月以降は介護医療院)
居宅サービス
ア. 訪問サービス
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問看護
- 訪問入浴介護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
イ.通所サービス
- 通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型通所介護
- 通所リハビリテーション(デイケア)
ウ.短期入所サービス
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護
エ.福祉用具等のサービス
- 福祉用具の貸与(レンタル)
- 福祉用具の購入
- 住宅の改修
オ.その他のサービス
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護
- 小規模多機能型居宅介護
介護予防サービス
介護予防サービス
- 介護予防通所介護
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防訪問介護
地域密着型介護予防サービス
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 介護予防認知症対応型サービス
認知症を発症している高齢者向けのサービスには、介護予防認知症対応型通所介護と、介護予防認知症対応型共同生活介護の2種類があります。
地域支援型の予防サービス
- 介護予防特定高齢者施策
- 介護予防一般高齢者施策
3.介護サービスを受けるときの負担
利用の際の負担
介護保険のサービスには、サービスごとに利用料金が決められています。
サービスを利用したときの自己負担額は、原則介護サービス費用の1割ですが、第1号被保険者であって合計所得金額(収入から必要経費等を差し引いた金額)が160万円以上(例えば収入が年金のみの場合、年金額が年280万円以上)の場合、自己負担割合が2割となります。
ただし2割とされる場合でも、世帯の65歳以上の者の「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が1人の場合は280万円未満、2人以上の場合は346万円未満であれば1割負担のままです。
なお、第2号被保険者は所得に関わらず一律1割負担です。
そのほか、次の費用が自己負担となります。
- 施設サービスを利用した場合は食費と居住費
- 短期入所サービスを利用したときは食費と居住費
- 通所サービスを利用したときは食費
また、要介護度ごとに定められている1か月に利用できるサービスの上限額(支給限度額)を超えた部分の利用料は全額自己負担になります。
利用者負担の軽減
施設サービスを利用した場合の食費と居住費、短期入所サービスを利用したときの食費と居住費は、所得の状況に応じて負担の軽減措置があるほか、社会福祉法人の提供する介護サービスを利用する場合は、所得状況により社会福祉法人による利用者負担の減免制度があります。
高額介護サービス費
世帯での1か月の介護サービスにかかる利用者負担額の合計が所得区分に応じた上限額を超えた場合は、利用者負担軽減のため、超えた金額について高額介護サービス費が支給されます。
高額介護サービス費制度により、利用者が支払う月々の利用費には上限が設けられています。
- 現役並み所得者:世帯全員で44,400円(2015年8月利用分より新設)
- 一般:世帯全員で37,200円
- 世帯全員が市町村税非課税:世帯全員で24,600円
- 老齢福祉年金の受給者、前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の者:利用者個人で15,000円
- 生活保護受給者:利用者個人で15,000円
4.介護サービスの利用方法
介護サービスを利用しようとするときには、所定の手続が必要です。サービスを利用するまでの流れは次のとおりです。
申請
介護が必要と感じたら、保険者(市町村)の窓口に要介護認定の申請の手続をします。
認定の申請は、居宅介護支援事業所や介護保険施設などに代行してもらうこともできます。
要介護認定
ア.認定調査
申請が受け付けられたら、調査員が自宅等を訪問して、ご本人の心身の状況や日常の生活状況等の項目について聴き取り調査を行い「認定調査票」を作成します。あわせて、保険者(市町村)の依頼により、主治医(かかりつけ医)に「主治医の意見書」を書いてもらいます。
イ.認定審査
作成された「認定調査票」を元にコンピューターで一次判定が行われます。この一次判定結果と「認定調査票中の特記事項」「主治医の意見書」を参考に、介護・医療・保健分野の専門家で構成される「要介護認定審査会」で二次判定を行い、要介護度を決定します。
要介護度は大きく要支援者と要介護者に分かれ、要支援者は要支援1~2、要介護者は1~5のように区分されており、介護の必要な程度によって要介護度が決定されます。
この要介護度に応じて、利用できる介護サービスの上限額(支給限度額)が決まります。また、要支援の場合、要介護の場合と比べ、利用できるサービスが限定されます。
なお、要介護認定の結果に不満があるときは、都道府県に設置されている「介護保険審査会」に申し出て裁決を受けることができます。
ウ.介護サービス計画の作成
要介護度が決定したら、本人や家族の要望、生活の状況、利用できるサービスの上限額などを勘案して、「介護サービス計画」を作成します。
「介護サービス計画」は自分で作成することも可能ですが、介護サービスについて広い知識をもった居宅介護支援事業所の「介護支援専門員(ケアマネージャー)」に依頼して作成してもらうことをお勧めします。「介護サービス計画の作成」については、利用者の負担はありません。
エ.サービスの利用
作成された介護サービス計画に沿って、介護サービス事業者から介護サービスの提供を受けます。
各サービス事業所においても、「介護サービス計画」の目的に従い、より詳細な「個別援助計画」が作成され、サービスを利用するひとりひとりに沿ったサービスが提供されます。
以下、詳細ページのご案内です。
- 高齢者福祉サービスとは(総論:種類・事業主体)
- 高齢者福祉サービスの内容1(訪問介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容2(通所介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容3(介護施設サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容4(高齢者向け住宅)
- 介護保険制度とは(総論)
- 施設利用契約の注意点1(書面作成、契約内容)
- 施設利用契約の注意点2(認知症の場合)
- 施設利用料の滞納
- 施設運営での注意点1(総論:法令上の義務)
- 施設運営での注意点2(利用者の身体拘束)
- 施設運営での注意点3(医療行為)
- 成年後見制度の利用1(総論、高齢者の財産管理)
- 成年後見制度の利用2(医療行為の同意)
- 成年後見制度の利用3(任意後見制度)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合1(後処理)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合2(死後事務委任)
- 施設の事業譲渡
- 施設の自己破産