1.ゼネコンとは
ゼネコンとはGeneral Constructorの略語であり、元請業者として発注者から直接、土木や建築工事一式を直接請け負う総合建設会社のことを指します。
日本では、高度経済成長期に建設需要が飛躍的に増大したことにより、急成長を遂げたゼネコンが多数存在します。一方で、バブル崩壊後の建設需要の低迷、構造改革による政府の公共事業縮小などが原因で、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、準大手以下で経営破綻に追い込まれたゼネコンや金融機関などの債権放棄等の支援によって辛うじて命脈を保つゼネコンが多く見られました。
ゼネコンは、建設業法上の複数の建設業許可を有する一方で、得意とする分野に特化するものや、その成り立ちから鉄道事業者や鉱業会社・鉄鋼会社の系列であるものも少なくありません。前者については、国や地方自治体が競争入札において専門工事を分割発注する傾向があるなどの理由もあり、ゼネコンから専門工事部門を分社化、子会社化する、あるいは事業合弁により複数社の専門工事部門からなる新たな専門工事業者が組織されるなどの動きも見受けられます。
ゼネコンの建設施工の形態
ゼネコンは発注者から工事一式を請け負いますが、自ら施工するのではなく、専門の施工業者を利用し、施工図の作成、工事施工計画、資材の調達、施工の指示、品質管理と工事全体の施工管理を行うことが主な役割です。 一般的な建築工事では基礎・躯体工事、外装工事、内装工事、設備工事、外構工事等様々な種類の工事が必要となりますが、それぞれの工事ごとに専門工事業者を組織して、施工を任せます。そして、専門工事業者はさらに下請業者に施工を請け負わせる場合もあります。
1つの工事に多数の業者が入ることから、全体の取りまとめや全体の施工管理は非常に重要です。
ゼネコンにとって、適切な品質を保ち、工期の遵守するためには、信頼できる下請業者の存在が不可欠であることから、表彰制度や講習会の開催などにより下請業者との関係を深めています。
2.ゼネコンの規模による分類
ゼネコンは売上高の規模に応じて大手ゼネコン、準大手ゼネコン、中堅ゼネコンに分類されます。
連結売上高が1兆円を超える(株)大林組、鹿島建設(株)、清水建設(株)、大成建設(株)、(株)竹中工務店の大手5社を大手ゼネコンと呼びます。
大手ゼネコンは高い技術力、設計力を備えていることに加え、財務体質が強固であり信用力が高いことから、全国および海外において大規模な工事を受注し施工することを得意としています。
準大手ゼネコン
一般的に、全国規模で事業を展開しているゼネコンのうち連結売上高が2,000億円以上1兆円未満のゼネコンを準大手ゼネコンと呼びます。
準大手ゼネコンは、平成26年度売上高によると、(株)安藤・間、(株)熊谷組、五洋建設(株)など9社となります。
中堅ゼネコン
連結売上高が1,000億円以上2,000億未満のゼネコンを中堅ゼネコンと呼びます。
中堅ゼネコンは、平成26年度売上高によると、青木あすなろ建設(株)、(株)淺沼組、飛鳥建設(株)、(株)植木組など26社となります。
準大手・中堅ゼネコンは事業規模や財務体質などで大手ゼネコンに一歩譲るものの、各社が得意とする技術力、設計力により、比較的大規模な工事から小規模な工事まで幅広い工事を受注しています。しかし、準大手・中堅ゼネコンの事業範囲は大手ゼネコンのほか、地方の建設会社と競合しており激しい受注競争が行われています。
3.ゼネコンと汚職事件
建設業界の不祥事として、談合等についてご説明しておりますが、ゼネコンのような大手建設会社ならではの不祥事として、政治家に対する汚職事件を挙げることができます。
平成5年、金丸信元自民党副総裁の巨額脱税事件の押収資料から、ゼネコン各社から中央政界や地方政界に多額の賄賂が送られている実態が判明しました。
東京地検特捜部による捜査の結果、平成5年から平成6年にかけ、建設大臣(当時)、宮城県知事、茨城県知事、仙台市長が逮捕されるという事態に発展しました。
捜査の対象となった事件は以下のとおりです。
(1)茨城県汚職事件
茨城県が発注する県庁舎移転新築工事や県立植物園温室新築工事、茨城県立医療大学新築工事に絡む汚職事件。
(2)宮城県汚職事件
宮城県の開発事業に絡む汚職事件。
(3)仙台市汚職事件
梅田川第一雨水幹線工事やJR仙台駅前再開発事業に絡む汚職事件。
(4)埼玉土曜会事件
談合をしていた埼玉土曜会について告発を見合わせるように公正取引委員会に働きかけた事件。
起訴された人物
(1)贈賄側
- 大昭和製紙名誉会長
- 清水建設会長
- 清水建設副社長
- 鹿島建設副社長
- 鹿島建設専務
- 鹿島建設東北支店次長
- 大林組副社長
- 大成建設副社長
- 間組(当時)会長
- 間組社長
- 間組東関東支店長
- 西松建設副社長
- 三井建設(当時)副社長
- 飛島建設名誉会長
(2)収賄側
- 建設大臣
- 茨城県知事
- 宮城県知事
- 仙台市長
- 茨城県猿島郡三和町長